多頭飼いの健康記録 — 「どの子が吐いた?」に答えられる1匹ずつのつけ方
多頭飼いの健康管理は、記録を混ぜないことから。家族が書く場所を1か所にし、1行ごとに「どの子か」を先に書きます。どの子が吐いたかわからないときは推測で割り振らず「不明」と書き、時刻と写真を残します。回数は1匹ずつ数えます。すぐに電話したいサインと、どの子かの確かめ方もまとめました。
朝7時、廊下に吐いた跡があります。家には猫が3匹。そら、きなこ、むぎ。3匹とも、何事もなかったような顔でごはんを待っています。
「むぎじゃない? 昨日も吐いてたし」「昨日のは、そらだと思ってた」。夕方、動物病院に電話すると、最初に聞かれます。「どの子が、いつから、何回吐いていますか?」
多頭飼いの健康記録は、ノートを頭数ぶんに分けるより、家族が書く場所を1か所にまとめ、1行ごとにどの子かを先に書くのが基本です。どの子かわからないときは、推測で誰かの記録に入れず「不明」と書き、時刻と写真を残す。そして回数は、1匹ずつ数える。受診を考える目安は、どれも「1匹が何回吐いたか」で書かれているからです。この記事の答えは、この3つです。
猫と暮らす家では、2匹以上はめずらしくありません。ペットフード協会の2025年の調査では、猫を飼っている世帯の平均飼育頭数は1.78匹でした。回答数から計算すると、猫を飼っている人のおよそ4割が2匹以上と暮らしています。何を記録するか、どのくらいの頻度で書くかは、1匹と暮らす家と変わりません。それは健康記録のつけ方の記事にまとめました。この記事で扱うのは、多頭飼いの健康管理で記録が混ざる場面と、混ぜないための書き方、そしてどの子のものかを確かめる方法です。
本記事は、メモフの開発者による「記録のつけ方」のガイドであり、獣医療のアドバイスではありません。吐いた、下痢をしたなど体調に関わることは、かならずかかりつけの獣医師にご相談ください。
多頭飼いの健康記録は、1匹ずつノートを分けたほうがいい?
分けるのはノートではなく、行です。家族が書く場所は1か所にまとめ、1行ごとに先頭に「どの子か」を書きます。
1匹に1冊ずつノートを用意する方法は、一見わかりやすく見えます。困るのは、どのノートにも書けないできごとが起きたときです。誰のものかわからない嘔吐。並んで食べていて、どちらが残したかわからないごはん。こうしたできごとは書く場所がないまま、見つけた人の記憶にだけ残ります。家族がそれぞれ別のノートやアプリに書いている家でも、同じことが起きます。
1か所にまとめても、1行ずつ「どの子か」が書いてあれば、あとから1匹分だけを拾い出せます。動物病院に持っていくのは、その拾い出した1匹分と、その子だったかもしれない「不明」の行です。杉並区獣医師会が編集している小冊子「動物通信」は、体重や予防・治療の履歴、飲んでいる薬を書いた健康手帳があると、初めての病院でもその子の状態を知ってもらいやすいとしています。多頭飼いなら、1行ずつ拾い出した1匹分が、その手帳の代わりになります。環境省の防災パンフレットも、ペットの名前や体重、持病、飲んでいる薬などを書き込む、1匹分の用紙を載せています。
なぜ、「どの子か」で回数を分けないといけないのか
この記事で紹介する受診の目安は、どれも1匹あたりの回数で書かれているからです。
米国コーネル大学獣医学部の猫の健康センターは、週に1回より多く吐く猫や、吐くことに加えて元気がない、食欲が落ちている、吐いたものに血が混じるなどの様子がある猫は、早めに獣医師に診てもらうべきだとしています。テキサスA&M大学の獣医師は、許容できる回数に決まったルールはないとしたうえで、月に2回程度より多く吐くときや、ほかに具合の悪そうな様子があるときは受診を、と話しています。犬については、コーネル大学の犬の健康センターが、週に1回吐くだけでも病気のサインのことがあるとしています。
目安の回数は資料によって違いますが、どれも1匹ずつの回数です。
3匹と暮らす家で、「今週は3回吐いた」とします。3匹が1回ずつなら、どの子もコーネル大学の目安(週に1回より多い)には届いていません。1匹が3回なら、その子は目安を超えています。家族にとっては同じ「今週3回」でも、獣医師に伝えるべき中身はまったく違います。「不明」の行があるなら、1匹が3回の可能性も残ります。3匹が同じころに吐いたこと自体も、獣医師に伝える情報です(あとで書きます)。目安より少なくても、気になる様子があれば相談してください。
回数の変化も同じです。テキサスA&M大学獣医学部の記事は、吐く回数が急に変わった猫も獣医師に診てもらうべきだとしています。変化に気づくには、その子のふだんの回数がわかっていなければなりません。
組み合わせでも、同じことが起きます。川崎市獣医師会は、嘔吐と下痢が同時にあると脱水が急に進むため、すぐに受診が必要だとしています。1匹が吐いて、別の1匹が下痢をしたのか。1匹が両方なのか。どの子かが書いていなければ、記録からは区別できません。区別できないときは、区別できないまま電話で伝えてください。
反対に、何匹かが同じころに具合を悪くしていること自体が、大事な情報になることもあります。メルク獣医マニュアルの飼い主向け版によると、感染症ではない消化器の病気は、ふつう一度に1匹にしか出ません。例外は食べすぎや毒物に関わる病気で、一緒に暮らす何匹もに出ることがあります。同じページは、消化器の感染症は、じかに触れ合うことや、便で汚れた食べ物や水を通して広がることが多いとも説明しています。何匹もが吐いているときは、そのことも獣医師に伝えてください。1匹ずつの記録があれば、何日かに分かれて起きたときにも気づけます。
どの子が吐いたかわからないときは、どう書けばいい?
推測で誰かの記録に入れず、「不明」と書きます。そのうえで、見つけた時刻と場所、吐いたものの様子を書き、写真を残します。
見当がつくことはあります。口のまわりがぬれていた。1匹だけ、ごはんを残していた。それでも「たぶんむぎ」をむぎの記録に入れてしまうと、違っていたときに、むぎの回数は1回多く、本当に吐いた子の回数は1回少ないままになります。どのくらい確かなのかを、行の中で書き分けておきます。
| 確かさ | いつ使う | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 確定 | 吐くところを見た。1匹だけの部屋で見つけた | 確定:むぎ |
| 推定 | 見ていないが、理由があって見当がつく | 推定:むぎ(口のまわりがぬれていた) |
| 不明 | 見当がつかない | 不明(そら・きなこ・むぎのどれか) |
1行は、たとえば次の形にしておくと、家族の誰が書いても揃います。
不明(3匹のどれか) 9/28 7:10 廊下 嘔吐1回 フードのかたちのまま 写真あり 記録:母
書く項目は、公的な資料や動物病院が挙げている項目と重なります。環境省の防災パンフレットは、日ごろの健康チェックのポイントとして、嘔吐の有無と回数、吐いたものの形状、便や尿の状態と回数を挙げています。日本動物医療センターは、便や尿、吐いたものを持っていくのが難しいときは、色や形、混じっているものがわかる写真が大きな情報源になるとしています。スマホで撮っておけば、撮った時刻も一緒に残ります。
あとでどの子かわかったら、新しい行を足さずに、その行に書き足します(例:「→ むぎ(9/29追記:父が7時ごろ吐くところを見ていた)」)。新しい行を足すと、同じ1回が2回に数えられます。
どの子が吐いたか・粗相したかを確かめるには?
いちばん大切なのは、様子のおかしい子がいれば、確かめるより先に動物病院へ連絡することです。トイレの外でのおしっこなら、どの子かを確かめる前に、まず動物病院に相談します。米国の動物愛護団体ASPCAも、獣医師にしっかり診てもらうことを最初の一歩としています。
どれがどの子のものかわからないのは、多頭飼いの家ではよくある悩みです。岡山県の永原動物病院は、多頭飼いの飼い主から特に多い相談として「どの猫がフードを食べていないのか分からない」「下痢をしている猫が特定できず不安」を挙げ、必要に応じて1匹ずつ診察や検査をして確かめているとしています。そのうえで、家でできることを順に挙げます。
その場で、1匹ずつ見比べる。 元気があるか、口のまわりがぬれていないか、ごはんを残していないか。1匹だけいつもと違う子がいれば、それ自体を記録に書きます。
トイレとお皿を、頭数より多く用意する。 国際猫ケア団体(International Cat Care)は、トイレやお皿などを「1匹に1つ、さらにもう1つ」、別々の場所に置く目安を紹介しています。ペット保険会社のペット&ファミリー損害保険も、複数の猫でトイレを共有していると、下痢や血尿などが起きたときにどの子のものか把握しにくくなると書いています。
ごはんを1匹ずつ分けて見守る。 米国猫臨床医協会(AAFP)の2024年の指針は、仲のよい猫どうしでも、ごはんのときは別々にするよう勧めています。誰が残したかが、そのままわかります。
一時的に、1匹ずつ部屋を分ける。 ASPCAは、トイレの外の粗相がどの猫のものか確かめる方法として、一時的に1匹ずつ部屋を分けることを挙げています。ただし、ほかに手を打たないまま小さな部屋に何日も閉じ込めておくことは、ASPCAもすすめていません。吐いた子を確かめるために部屋を分けて、次に吐くのを待つことはおすすめしません。吐くことが続いていてどの子かわからないなら、「不明」のまま動物病院に相談してください。
獣医師に相談して、印をつけてもらう。 ASPCAは、獣医師に相談したうえで1匹にだけ無害な色素を与え、その子のおしっこを見分ける方法を紹介しています。便については、獣医学の教育サイトWikiVetが、1匹ずつのごはんに消化されない目印を少し混ぜ、数日のあいだ便を確かめる方法を説明しています。どちらも、かならず獣医師の指示のもとで行ってください。
カメラで見る。 WikiVetは、決まった場所がくり返し汚されるときに、動きに反応して録画するカメラで確かめる方法も挙げています。
トイレの外でのおしっこは、しつけの問題と決めつけないでください。International Cat Careの2025年の指針は、トイレの外での排尿は下部尿路の病気でよく見られるサインで、行動が原因と考える前に病気を除外すべきだとしています。同じ指針は、多頭飼いの家を、猫の特発性膀胱炎の危険因子の1つとして挙げています。どの子がどこでしたのかを1匹ずつ残しておくことが、ここでも役に立ちます。
体重・お薬・通院は、どう分けて残す?
体重は同じ日に1匹ずつ測る。お薬は、しまう場所から1匹ずつ分ける。動物病院には、その子の記録を中心に持っていきます。
体重は、同じ日に、同じ体重計で。 環境省のペットフード・ガイドラインは、体型の微妙な変化は見た目では気づきにくいとして、週1回程度の体重測定をすすめています。犬や猫を抱いて体重計に乗り、あとから自分の体重を引く方法も紹介しています。多頭飼いなら、測る日と体重計を揃え、1匹測るごとに、その子の名前と一緒に記録します。3匹続けて測って最後にまとめて書くと、どの数字がどの子のものかが入れ替わることがあります。
お薬は、しまう場所から分ける。 米国食品医薬品局(FDA)は、取り違えを防ぐために、家族やペットの薬を1人・1匹ずつ分けて保管するよう勧めています。獣医師の指示がない限り、ある動物の薬をほかの動物に使い回さないようにも呼びかけています。誰がいつあげたかを家族で共有する方法は、投薬の重複を防ぐ記事にまとめました。
動物病院には、その子の記録を中心に。 東京農工大学の小金井動物救急医療センターは、受診の日には、その子の状態を説明できる人が連れてくるよう求めています。多頭飼いの家では、吐くところを見た人と、病院へ連れていく人が違うこともあります。見た人が書いた1行があれば、連れていく人も同じことを伝えられます。その子だったかもしれない「不明」の行や、ほかの子も同じころに吐いたり下痢をしたりしていたことも、あわせて伝えます。症状を短く伝えるコツは、動物病院での症状の伝え方の記事が参考になります。
今日からできること
大きな準備はいりません。今日から始められることを4つ挙げます。
- 書く場所を1か所に決める。 紙でもアプリでもかまいません。「行の先頭にどの子かを書く」を、家族のルールにします。
- 「不明」の書き方を決めておく。 確定・推定・不明の3つだけで十分です。
- 今週末、全員の体重を同じ体重計で測る。 1匹ごとに、名前と一緒に書きます。これが、それぞれのふだんの数字になります。
- 電話番号を記録の近くに置く。 かかりつけと、近くの夜間救急に対応している動物病院の番号を、記録の近くか冷蔵庫に貼っておきます。
メモフの立ち位置
メモフは、ペットの健康記録と写真を家族で共有するアプリです。多頭飼いの記録で何ができるのかを、具体的に書いておきます。いまのアプリで実際にできることだけです。
- 記録は、かならず1匹ずつです。 健康の画面は1匹ずつ表示され、体重、お薬、通院、お世話の記録は、どれもどれか1匹の記録として保存されます。記録する画面は、はじめからどれか1匹が選ばれた状態で開くので、保存する前に、どの子の記録になっているかを確かめてください。
- 体調不良を、症状を選んで記録できます。 嘔吐、下痢、食欲がない、元気がない、せき・くしゃみ、かゆがる、ほかの症状から選び、メモを添えられます。今日何回記録されたかがボタンに表示されます。13日前までなら、日付と時間帯(朝・昼・夕方・夜)を選んでさかのぼって記録できるので、正確な時刻はメモに書き添えておくと確実です。
- 誰がいつ記録したかが、サークルの全員に見えます。 記録できるのは、オーナーと共同オーナーです。
- 1匹ずつ、カレンダーとグラフで振り返れます。 月と週のカレンダーのほか、1週間から1年までのグラフで、体調不良やお世話の回数、お薬をあげた割合、体重の変化を見られます。
- 「どの子かわからない」を置く場所はありません。 記録できる家族はみんな同じ場所に書けますが、記録はかならずどれか1匹に入ります。不明や推定のできごとは、家族で決めた紙やメモに書いておき、どの子か確かめられてから、その子に記録してください。メモフを使う場合、不明の行だけは紙やメモの側に残るので、書く場所は2か所になります。メモフに記録したら、紙の行にも「→ メモフに記録済み」と書き足しておくと、同じ1回を2回数えずにすみます。メモ欄に「推定」と書いても、その子の体調不良の回数やグラフには1回として数えられます。
- 記録は、あとから別の子に移せません。 間違えたときは、できごとの日時から14日以内なら削除して、正しい子に記録し直せます。それより前の記録は、アプリから削除できません。
- 健康記録のリンクは無料です。 1日・7日・30日で切れるリンクで、1匹ずつ、獣医さんやシッターさんに健康記録を見せられます。見えるのは、アレルギー・注意事項、服用中のお薬、ワクチン・予防、体重、通院の記録です。体調不良などのお世話の記録やメモは、リンクには含まれません。
- 獣医さん用PDFはプレミアムです。 1匹分の体重の推移、お薬、ワクチンや予防、通院の記録に加えて、直近14日のお世話の記録(体調不良と症状を含む)をまとめます。
- 無料で登録できるのは、1つのサークルに2匹までです。 3匹目からはプレミアムになり、何匹でも登録できます。オーナーか共同オーナーの契約で、サークルのみんながプレミアムになります。亡くなった子は数に入りません。
登録した子の健康の記録は、過去の分まで含めてどのプランでも無料です。全データのエクスポートも、どのプランでもずっと無料です。広告は表示せず、データを販売することもなく、公開のフィードもありません。メモフでできることは機能ページ、何が無料で何が有料かは料金ページでご覧いただけます。
もちろん、紙のノートでも十分です。書く場所を1か所にして、1行ずつどの子かを書く。わからなければ推測せず「不明」と書く。回数は1匹ずつ数える。この3つが守れていれば、道具は何でもかまいません。
繰り返しになりますが、本記事は記録のつけ方のガイドであり、獣医療のアドバイスではありません。ぐったりしている子がいる、何度も吐いている。そんなときに探すのは、どの子の記録かではなく、動物病院の電話番号です。
参考にした資料
- 急な嘔吐・下痢が続くときの危険性と対応(公益社団法人 川崎市獣医師会「かわペット」、2026年7月更新)
- 2025 iCatCare consensus guidelines on the diagnosis and management of lower urinary tract diseases in cats(International Cat Care、Journal of Feline Medicine and Surgery、2025年、英語)
- 令和7年(2025年)全国犬猫飼育実態調査 主要指標サマリー(一般社団法人 ペットフード協会)
- 令和7年(2025年)全国犬猫飼育実態調査 犬・猫 複数飼育者の属性(一般社団法人 ペットフード協会)
- 救急の備え ~いざという時に慌てないために~(杉並区獣医師会「動物通信」、2015年)
- 備えよう!いつもいっしょにいたいから2 ペットも守ろう!防災対策(環境省、2017年)
- Vomiting(コーネル大学獣医学部 猫の健康センター、英語)
- When To Be Concerned About Feline Vomiting(テキサスA&M大学獣医学部、2021年、英語)
- Vomiting(コーネル大学獣医学部 犬の健康センター、英語)
- Introduction to Digestive Disorders of Cats(メルク獣医マニュアル 飼い主向け版、英語)
- 動物病院で症状をうまく伝えるコツ:動画と写真が「名探偵」になる(日本動物医療センター、2026年)
- 複数の猫と暮らす飼い主様へ|多頭飼いならではの健康管理と受診の考え方(永原動物病院、2026年)
- Multi-cat households(International Cat Care、英語)
- 猫を多頭飼いする際のトイレはどうする?理想的なトイレ環境を解説(ペット&ファミリー損害保険、2023年)
- 2024 AAFP intercat tension guidelines: recognition, prevention and management(米国猫臨床医協会 AAFP、Journal of Feline Medicine and Surgery、2024年、英語)
- Litter Box Problems(ASPCA、英語)
- Housesoiling - Cat(WikiVet、英語)
- 飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~(環境省)
- Properly Store Medications to Keep Your Pet Safe(米国食品医薬品局 FDA、英語)
- Medication Errors Happen to Pets, Too(米国食品医薬品局 FDA、英語)
- 飼い主の方へ(東京農工大学 小金井動物救急医療センター)
- 多頭飼い
- ペットの健康
- 健康記録
- 猫の嘔吐
- 家族で共有
- 体重管理
- 動物病院