老犬の介護と仕事の両立 — 夜と朝の当番の分け方と、交代で渡す「4行の引き継ぎ」
老犬の介護と仕事を両立するには、一人で抱えず、夜と朝の当番を分けて交代の時刻を決めます。交代のたびに、お薬・ごはん・トイレ(おむつ)・ひとことの4行を次の人に渡します。一人で介護しているときのシッターさんや老犬デイケアへの頼み方、仕事を休めるか、疲れて限界のときの相談先もまとめました。
夜中の2時、フローリングを歩く爪の音で目が覚めます。15歳の犬が、部屋の隅をぐるぐる回っています。おむつを替えて、水を飲ませて、横でなでているうちに、窓の外が白んできます。7時半には家を出なければいけません。
夕方、先に帰ってきた家族がLINEを開くと、朝の連絡は「おしっこ出てた」の一言だけです。朝のお薬はあげたのか。ごはんはどれだけ食べたのか。おむつは何時に替えたのか。聞こうにも、朝の当番の人はまだ会社です。
誰も手を抜いていません。昼も夜も続くお世話が人から人へ移るたびに、「何をしたか」が一緒に渡っていないだけです。
老犬の介護と仕事を両立するには、一人で全部を抱えず、夜と朝の当番を分けて、交代の時刻を決めます。交代のたびに、お薬・ごはん・トイレ(おむつ)・ひとことの4行を、次の人が1画面で見られる形で渡します。そして毎日、その日が「いい日」だったか「つらい日」だったかを一言残し、受診のときに獣医師に見せます。この記事の答えは、この3つです。
老犬の介護と仕事の両立について調べると、夜鳴きの原因を解説する動物病院の記事や、老犬ホームの案内、介護を続けた人の体験記が多く見つかります。相談への答えも、家族に協力してもらう、シッターさんを頼む、というところで終わっていることがよくあります。この記事で扱うのは、その先です。手伝ってくれる人がいるなら、交代のときに何を渡せば、次の人が迷わずに続けられるのか。一人で介護しているなら、ペットシッターさんや老犬デイケアに何を伝えればいいのか。
本記事は、メモフの開発者による「記録のつけ方」のガイドであり、獣医療のアドバイスではありません。夜鳴きやトイレの変化、お薬のことは、かならずかかりつけの獣医師にご相談ください。病気の見通しや治療の選び方も、この記事では扱いません。
老犬の介護と仕事、両立がきついのはどこ?
きつくなりやすいのは、夜と、出勤前・帰宅後の「つなぎ目」、そして予定どおりにいかない日です。夜と予定外の出来事が負担を大きくすることは、海外の研究で示されています。家族の行き違いが負担を重くすることは、獣医師向けの指針にも書かれています。
夜。 AAHAが2023年にまとめた高齢ペットのケア指針は、犬の認知機能不全で最もよく見られるサインとして、昼間に眠って夜に落ち着かなくなること、触れ合いが減ること、家の中でとまどうこと、不安そうにすることを挙げています。2012年のYahoo!知恵袋には、15歳の犬の介護と仕事の両立に悩む人の相談があり、「昼夜逆転で夜中、排泄、食事の世話が必要です。」と書かれています。日中は仕事、夜は介護。いちばん先に削られるのは、眠る時間です。
つなぎ目。 朝に家を出る人から、夕方に帰る人へ。夜の当番から、朝の当番へ。お世話が人から人へ移るところで、お薬やごはんの「済んだ・まだ」があいまいになります。AAHAの同じ指針は、ペットのお世話をめぐってパートナーや家族と言い争うことが、介護する人の負担を重くすることがある、と書いています。交代のときの「やってくれたと思ってた」が、こうした言い争いの種になることもあります。
予定どおりにいかない日。 スロベニアで516人の飼い主を対象にした2026年の研究は、認知機能不全の犬、がんの犬、健康な高齢の犬の飼い主を比べ、時間、仕事と生活への影響、気持ちなど7つの面から負担を調べました。時間の負担を大きくしていたのは、夜に落ち着かない、方向がわからなくなるといった、予測できない認知機能不全の症状でした。
2024年に獣医学の学術誌Veterinary Recordに載った研究は、高齢の犬の飼い主へのオンライン調査から、介護の負担と関係する要因の一つに、飼い主が仕事をしているかどうかを挙げています。ほかに、認知機能不全の重さ、犬が寝る場所、家族の人数、犬と飼い主の年齢、犬がお薬を飲んでいるかどうかも挙がっていました。この調査では、飼い主の16%が、臨床的に意味のある程度の負担を抱えていました。
トイレも、時間を読めないお世話の一つです。ヤマザキ動物看護大学の2021年の調査では、高齢の犬に見られた認知機能の低下に関わる様子のうち、いちばん多かったのは排泄の失敗でした。半数(50%)の犬に見られ、出始めたのは平均14歳でした。日本獣医師会雑誌に載った酪農学園大学の調査(10歳以上の犬72頭)では、認知障害に含まれる行動変化が14歳以上で急に増えていて、飼い主が困っていることとして多かったのは、長期間の通院と犬の行動変化でした。
両立がきついのは、気持ちや努力が足りないからではありません。夜、交代のつなぎ目、予定どおりにいかない日。手を打つなら、この3つに分けて考えると整理しやすくなります。
老犬の夜鳴きで眠れないとき、夜と朝の当番は家族でどう分ける?
夜を前半と後半に分けて、交代の時刻を決めます。当番でない人は、その時間は起きなくていいことにします。
共働きの家で「起きたほうが見る」にしておくと、眠りの浅い人がいつも起きることになります。決めておきたいのは、次の4つです。
- 時刻で区切る。 たとえば、寝る前から夜中の3時まではAさん、3時から朝まではBさん。どちらを持つかは、翌朝の出勤時刻や、それぞれの眠り方で決めてかまいません。
- 当番でない人は、起きなくていい。 交代の時刻を決める意味は、片方がまとまって眠れることにあります。
- 朝と休日も当番にする。 出勤前のおむつ替えやトイレ、休日の掃除やシーツの洗濯も、誰がやるかを決めておきます。
- 交代のときは、4行を書いてから寝る。 中身は次の節で紹介します。
犬が夜に眠らず、家族も眠れていないこと自体を、かかりつけの獣医師に相談してかまいません。AAHAの指針は、夜通しハアハアと息をしながら歩き回る犬の例を挙げて、まず睡眠の乱れを和らげることで介護する人のストレスが軽くなり、ほかの体の問題に向き合えるようになることがある、としています。東京都動物愛護相談センターが紹介している飼い主の体験談にも、昼夜逆転した夜鳴きで寝不足になり、疲れ果てていたという声があります。
何が原因で、どうすればいいかは、犬によって違います。この指針は、メラトニンなどのサプリメントが、高齢のペットによく使われる薬と影響し合うことがあると注意しています。自分の判断で薬やサプリメントを与えず、獣医師と話して決めてください。相談するときは、何時ごろに起きて、どのくらい続いたかを書いた記録が役に立ちます。
当番を頼める家族がいない、頼んでも引き受けてもらえない、という家もあると思います。家族にどう頼めばいいかは、家族が犬のお世話を手伝ってくれないときの記事にまとめました。一人で介護している場合のことは、このあと書きます。
老犬の介護を交代するとき、次の人に何を引き継げばいい?
お薬・ごはん・トイレ(おむつ)・ひとことの4行です。スマホの1画面か紙1枚に収まる、ひと目で読める量にします。
| 項目 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| お薬 | あげたか・時刻・あげた人 | 朝の分 7:10 あげた(父) |
| ごはん | 何を・どれだけ・時刻 | ふやかしたフード 6:50 半分 |
| トイレ・おむつ | 時刻・出たもの・替えたか | 6:30 おしっこ多め、おむつ替え |
| ひとこと | いつもと違ったこと | 2時〜4時に歩き回る。おむつ替えで落ち着いた |
1行にまとめるなら、たとえばこうです。
7:20 交代(父→母) お薬:朝の分 7:10 あげた(父) ごはん:6:50 ふやかしたフード半分 トイレ:6:30 おしっこ、おむつ替え ひとこと:2〜4時に歩き回る
4行に絞るのは、交代のたびに書くものだからです。長い日誌は続きません。お薬は、抜けても重なっても困ります。ごはんをどれだけ食べたかは、受診のときに獣医師に伝える材料になります。トイレとおむつは、最初の節で見たとおり、高齢の犬で多い変化です。ひとことには、いつもと違ったことだけを書きます。
書き方のルールは3つです。
- やったら、その場で書く。 あとでまとめて書こうとすると、書き忘れた1行が「まだ」に見えます。次の人はそれを信じて、もう一度あげるかもしれません。
- 書いていないことを、「やっていない」と決めつけない。 空欄を見つけたら、前の当番に聞きます。とくにお薬は、あげたかどうか確かめられないときに、足すか見送るかを自分で決めないでください。前の当番に連絡がつかないときは、かかりつけの動物病院に電話して、指示を聞きます。
- 「わからない」も書く。 「お薬:朝の分、あげたか不明。8:10 病院に電話して指示を聞いた」のように残しておけば、次の人も同じところで迷いません。
交代のすき間で、お薬が抜けてしまうこともあります。飲ませ忘れに気づいたときにどうするかは毎日のお薬を飲ませ忘れたときの記事に、反対に2人ともあげてしまうのを防ぐ方法は投薬の重複を防ぐ記事にまとめました。
置き場所は、1か所に決めます。冷蔵庫に貼った紙、家族のLINEの決まったトーク、記録アプリ。どれでもかまいませんが、併用すると、どこに書いたかで迷います。紙は、家の外からは見えません。会社から「朝のお薬、済んでる?」を確かめたいなら、スマホで見られる形にしておく必要があります。
一人で介護しているなら、シッターや老犬デイケアに何を伝える?
変わらない情報を1枚にまとめて最初に渡し、その日のことは、家族の交代と同じ4行で書いてもらいます。
家族と交代できず、一人で介護している人もいます。人やサービスに頼るのは、手を抜くことではありません。Yahoo!知恵袋にも、家族が手伝ってくれず、一人で老犬の介護をしているという2022年の相談があります。東京都動物愛護相談センターは「高齢の犬や猫のケアをたったひとりで行うことはとても大変です。」と書き、「家族や周囲の協力を得て、様々なサービスを活用しましょう。」と呼びかけています。挙げているのは、動物病院の往診、ペットの送迎、健康診断、ペットホテル、ペットシッターなどです。
環境省のパンフレットも、ペットの介護について「一人で抱え込まず、家族と協力したり、かかりつけの動物病院に相談し、無理なく続けられる方法で向き合いましょう。」としています。頼める先を探すなら、高齢の犬に慣れたペットシッターさんや預け先を知らないか、かかりつけの動物病院に聞いてみてください。AAHAの指針は、動物病院が、高齢のペットに向いた地域のペットシッター、デイケア、ペットホテルなどのリストを用意しておくことを勧めています。お薬をあげられるスタッフのいる自宅預かりのサービスにも触れています。
最初に1回渡すもの:変わらない情報。
- アレルギーや注意事項(触られるのを嫌がる場所、知らない人に吠えやすいなど)
- 服用中のお薬の名前とあげる時刻、処方どおりの量
- ごはんの種類と、ふやかし方などのあげ方
- トイレやおむつ替えのやり方
- かかりつけの動物病院と、夜間救急に対応している動物病院の連絡先
- あなたの連絡先と、もしものときに頼れる人の連絡先
東京都動物愛護相談センターの「ペットを守る緊急連絡カード」も、飼い主とペットの基本的な情報や、かかりつけの動物病院、いざという時にペットを託せる人の連絡先などを書いておける形になっています。もとは飼い主にもしものことがあったときのためのカードですが、項目はそのまま、預け先に渡す情報の下書きになります。
毎回書いてもらうもの:その日の4行。 帰るときに、お薬・ごはん・トイレ(おむつ)・ひとことの4行を書いてもらいます。家族の交代と同じ形なので、帰ってきたあなたが、そのまま夜の当番を始められます。お薬をあげてもらった日は、あげた時刻も忘れずに書いてもらいます。
本番の前に、短く試す。 米国ケネルクラブ(AKC)の記事では、獣医師が、散歩代行(ドッグウォーカー)やデイケアを使うなら、犬が気に入るかを確かめるお試しの期間を設けてはどうかと勧めています。
留守番の長さは、その子で決める。 何時間までなら留守番できるかの目安は、この記事では挙げません。AKCは、高齢の犬は年をとったことや、おしっこをがまんしにくくなる体の不調のために、トイレに出す回数を増やす必要が出てくることがあるとしています。見守りカメラで日中の様子を見ている人もいると思います。帰宅して見つけたトイレの失敗やおむつの状態、カメラで気づいたことは、時刻と一緒にひとことの行に書いておきます。次の人に渡せますし、その子が留守番できる長さを獣医師と相談するときの材料にもなります。
預けるときの全般的な準備は、家族やペットシッターさんにペットを預けるときの記事にまとめました。この記事で足したのは、高齢の犬の介護に合わせた4行の引き継ぎです。
老犬の介護で、仕事は休める?
法律で定められた介護休業や介護休暇は、犬の介護には使えません。休みが必要なときは、有給休暇や勤務先の制度を確かめます。
育児・介護休業法は、介護休業を、要介護状態にある「対象家族」を介護するための休業と定めています。介護休暇も、同じ対象家族の世話をするための休暇です。対象家族として挙げられているのは配偶者、父母、子、配偶者の父母などで、ペットは含まれません。そのため犬の介護は、この法律の介護休業や介護休暇の対象になりません。
休みをとるなら、有給休暇や時差出勤、在宅勤務など、就業規則に使える休暇や働き方がないかを確かめ、わからなければ人事の担当者に聞いてみてください。
通院のための休みが続くときは、電話やオンラインで相談できる場面があるかを、かかりつけの動物病院に聞いてみましょう。AAHAの指針も、通院の足がない、仕事を休みにくいといった事情のある飼い主の場合、電話やオンラインでの診療や相談を使うと、高齢のペットが診察を受けやすくなることがあるとしています。どこまで電話やオンラインで対応できるかは、病院やその子の状態によって違います。
老犬の毎日の様子は、どう記録すれば獣医さんに伝わる?
「いい日」「ふつう」「つらい日」の一言を毎日同じ時間に残すと、その子のふだんと、いつから変わったかが伝わります。その日の当番の人がどれかを書き、理由を一つ添えます。
AAHAの指針は、認知機能不全の見落としを防ぎ、経過を追うために、認知機能不全や生活の質についての質問票を飼い主が決まった間隔で記入し、その点数の移り変わりを診療記録に残して、治療の参考にしたり、飼い主への説明に使ったりできるとしています。同じ指針は、毎日・毎週・毎月など決まった間隔で写真や動画を撮り、体型や動き、楽しそうにしていることなどの変化を、飼い主と獣医師で追うことも勧めています。
一言の記録は、それを毎日の当番の中でできる形にしたものです。質問票の代わりにはなりませんが、「先月の後半から、つらい日が週に3回くらいになった」と言えるようになります。
添える理由は、AAHAの指針が挙げる項目から選ぶとよいでしょう。指針は、高齢のペットのくわしい問診で聞くことがあるものとして、食べ方や飲み方、運動、動き、遊び、排泄、機嫌、毛づくろい、目や耳の様子を挙げています。
- 「つらい日:夜2時〜5時、歩き回る」
- 「ふつう:ごはん半分、散歩は家の前まで」
- 「いい日:散歩で自分から歩いた」
続けるコツは3つです。時間を決める(寝る前など)。その日の当番が書く。迷ったら「ふつう」にする。
体重も、変化に気づく手がかりです。米国の動物病院グループVCAは、少なくとも2か月に1回、同じ体重計で体重を量るよう勧めています。体重の変化が、病気の早いサインになることがあるからです。VCAは、体の変化はわかりにくいことがあるとして、少なくとも年に2回、獣医師に診てもらうことも勧めています。
東京都動物愛護相談センターは、年をとった犬や猫について「このような変化に早く気付いて、その変化に応じてお世話の内容を少し変えることが必要になってきます。」と書いています。環境省のパンフレットも、高齢のペットのケアで「小さな変化を見逃さないよう心がけましょう。」としています。
一言の記録は、診断の代わりではありません。つらい日が続いたら、それを持って、いまの様子に合わせてできることがないかを獣医師に相談してください。記録は、その相談の材料です。食べない、ぐったりしているなど、冒頭に挙げた様子があるときは、記録をつける前に電話してください。一言の記録を、受診のときに「いつから・どのくらい・何が変わったか」に組み立てる方法は、動物病院での症状の伝え方の記事にまとめました。
老犬の介護に疲れた、限界だと感じたら?
一人で抱えず、人やサービスの手を借りてください。疲れていることは、かかりつけの獣医師に伝えてかまいません。できることの範囲を正直に話し、その範囲で続けられる計画を一緒に考えてもらいます。
疲れるのは、あなただけではありません。AAHAの指針も、高齢のペットの介護には、時間と根気とお金、そして気力と、多くの場合は体力も要るとしています。罪悪感やストレスも、介護する人の負担を重くすることがあると書いています。
2017年にVeterinary Recordに載った研究は、病気のペットの飼い主は介護の負担が大きく、その負担が心の健康や毎日の暮らしの質の低さと結びついていると報告しています。2022年の別の研究は、高齢の犬の介護が飼い主に与える影響には、人の家族を介護する人と多くの共通点があるようだと述べています。この研究では、犬の世話のために毎日の予定を変えなければならないことを、つい不満に思ってしまうときがあるか、年をとった犬を少しの間でも置いて出かけるのがこわいか、といった問いにも答えてもらっています。そう感じるときがあるなら、もっとがんばる合図ではなく、助けを借りる合図です。
同じ指針は、飼い主にできることの限界を認めて、その範囲で獣医師と一緒に計画を立てるのが、負担を抑えるいちばんの方法だとしています。「平日の昼のお薬は、誰もあげられません」「夜中に何度も起きていて、仕事に響いています」。そう言っていい場所が、診察室です。
動物病院に頼めることがないかも、聞いてみてください。この指針は、動物病院ができることの例として、与えやすいお薬の選択肢を示すこと、毎日のお世話を手伝う動物看護師などを用意すること、ペットシッターや一時的に介護を代わってくれる人のリストを渡すことを挙げています。高齢のペットの飼い主に渡す資料の例には、地域やオンラインの支え合いの場(サポートグループ)も入っています。
まわりの人の反応も、関係しているかもしれません。慢性的なまひのある犬の飼い主を調べた2026年の調査では、まわりから前向きな反応をもらえていた飼い主は、介護の負担が軽いという結果でした。
「もう仕事を辞めるしかない」と思いつめる前に、いまの状況をかかりつけの獣医師に話し、頼れるサービスを一度試してみてください。仕事を続けるか辞めるか、どちらを選んでも、責められることではありません。
疲れが抜けない、眠れない、気持ちが沈む。そんな日が続くときは、あなた自身のことも、医師や相談窓口に話してください。厚生労働省の「まもろうよ こころ」は、悩みや不安を抱えたときに相談できる窓口をまとめています。
今夜からできること
大きな準備はいりません。今夜から始められることを5つ挙げます。
- 交代の時刻を決める。 夜の前半と後半、そして朝。誰がどこを持つかを、家族で一度声に出して決めます。
- 4行の置き場所を1つ決める。 お薬・ごはん・トイレ(おむつ)・ひとこと。冷蔵庫の紙でも、アプリでもかまいません。
- ペットシッターさん用の「変わらない情報」をまとめる。 いまは頼む予定がなくても、どうしても仕事を休めない日のために。
- 「いい日・ふつう・つらい日」を1週間つけてみる。 寝る前に、その日の当番が書きます。次の受診に持っていきます。
- 電話番号を記録の近くに置く。 かかりつけと、近くの夜間救急に対応している動物病院の番号を、記録の近くか冷蔵庫に貼っておきます。
メモフの立ち位置
メモフは、ペットの健康記録と写真を家族で共有するアプリです。介護の交代で何ができるのかを、具体的に書いておきます。いまのアプリで実際にできることだけです。
- 「ごはん」「さんぽ」「トイレ」はワンタップで記録できます。 「おむつ替え」「いい日」「つらい日」のようなほかのことは、「+ ほかの記録・時間を指定」から「その他」を選び、40文字までの自分の言葉で残せます。少し前のことも、時間をさかのぼって記録できます。
- 誰がいつ記録したかが、サークル(メモフで記録を共有する家族のグループ)の全員に見えます。 ボタンには今日いちばん最近の記録の時刻と名前が表示され、「お世話の記録」の履歴では、誰が何をいつ記録したかを1件ずつ確かめられます。交代のときに見るのは、この画面です。
- 少し前に同じ記録があると、保存する前に確認します。 誰かが少し前に「ごはん」を記録していると、「ごはんは記録済みです」と表示され、誰が何時に記録したかを見たうえで、「やめておく」か「もう一度記録する」かを選べます。
- お薬は、あげる時刻になるとオーナーと共同オーナーにお知らせが届きます。 お薬のお知らせだけは、おやすみ時間中でも届きます。「あげた」はワンタップで、誰がいつあげたかがサークルの全員に見えます。お知らせは当番の人を選んで届くのではなく、通知をオンにしているオーナーと共同オーナーの全員が受け取ります(初期設定はオン)。夜中にお薬の時間がある家では、当番でない人のスマホにも届きます。
- 電波の届かないところで押した「あげた」は、その端末にだけ保存されます。 同期されるまで、家族の画面には出ません。
- 当番を決める機能や、引き継ぎをまとめた画面はありません。 交代の時刻を決めるのは家族です。引き継ぐ人は、今日のボタンとお世話の記録の履歴を見て確かめます。
- お世話の記録からは、お知らせは届きません。 ごはんやトイレ、おむつ替えのリマインダーもありません。「いい日・つらい日」を数えたり、グラフにしたりする機能もありません。
- 記録できるのはオーナーと共同オーナーだけ。 見る専用のメンバーは記録を見られますが、記録はできません。当番に入る家族は、共同オーナーにしておきましょう。
- Android版は準備中です。 当番に入る家族のなかにメモフを使えない人がいる家では、その人のぶんだけ別に書くより、全員で同じ紙の4行を使うほうが、引き継ぎが1か所にまとまります。
- 健康記録のリンクで、「変わらない情報」の一部を見せられます。 ペットシッターさんや老犬デイケアに送れる、1日・1週間・1か月で切れるリンクで、アカウントもアプリもいりません。見えるのは、アレルギー・注意事項、服用中のお薬(名前やあげる時刻などの予定)、ワクチン・予防、直近の体重、直近の通院記録です。
- 健康記録のリンクに出ないものもあります。 ごはんのあげ方、トイレ・おむつのやり方、連絡先には専用の項目がありません。紙にまとめておくか、あげ方ややり方は「アレルギー・注意事項」に書いておくと、リンクにも出ます。お世話の記録や、1回ごとに誰がお薬をあげたかも含まれないので、その日の4行は紙やメッセージでやりとりしてください。
- 体重はグラフで、通院は「先生から言われたこと」と一緒に残せます。 次の予約を入れておくと、オーナーと共同オーナーに7日前・前日・当日にお知らせが届きます。
- 疲れは減りません。 メモフを入れても、夜中に起きる回数も、介護の大変さも変わりません。できるのは、次の人が「やった?」と聞き直さなくても誰が何をいつしたかを見られるようにすることと、獣医師に伝える材料を残すことまでです。
お世話の記録も、お薬や体重などの健康の記録も、過去の分まで含めてどのプランでも無料です。健康記録のリンクも無料で、獣医さん用のPDFはプレミアムです。エクスポートはどのプランでもずっと無料で、すべての記録に加えて、直近30日のお世話の記録を読みやすくまとめたページも入ります。エクスポートしたページを開けば、「いい日・つらい日」の記録も受診に持っていけます。広告は表示せず、データを販売することもなく、公開のフィードもありません。介護の記録でできることは機能ページ、何が無料で何が有料かは料金ページでご覧いただけます。
繰り返しになりますが、本記事は記録のつけ方のガイドであり、獣医療のアドバイスではありません。食べない、ぐったりしている、吐こうとしても何も出ない。そんな夜は、記録をつけるより先に、動物病院に電話してください。
参考にした資料
- 快適に生活するためのヒント ~選択肢を増やそう~(東京都動物愛護相談センター)
- 高齢の犬や猫との暮らし方(東京都動物愛護相談センター)
- 私の動物介護の体験談(東京都動物愛護相談センター)
- ペットを守る緊急連絡カード(東京都動物愛護相談センター)
- 共に生きる 高齢ペットとシルバー世代(環境省)
- 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(e-Gov法令検索)
- 高齢犬の行動変化と飼い主の意識調査(日本獣医師会雑誌、2007年)
- 高齢犬の認知機能低下に対する飼い主の意識調査(Veterinary Nursing、日本動物看護学会、2021年)
- 病気の老犬の介護と仕事の両立(Yahoo!知恵袋、2012年)
- 老犬の介護皆さんは1人で全部してますか?(Yahoo!知恵袋、2022年)
- まもろうよ こころ(厚生労働省)
- 2023 AAHA Senior Care Guidelines for Dogs and Cats: Managing the Caregiver Burden(米国動物病院協会 AAHA、英語)
- 2023 AAHA Senior Care Guidelines for Dogs and Cats: Managing Cognitive Dysfunction and Behavioral Anxiety(米国動物病院協会 AAHA、英語)
- 2023 AAHA Senior Care Guidelines for Dogs and Cats: Senior Care Kits(米国動物病院協会 AAHA、英語)
- 2023 AAHA Senior Care Guidelines for Dogs and Cats: Evaluating the Healthy Senior Pet(米国動物病院協会 AAHA、英語)
- 2023 AAHA Senior Care Guidelines for Dogs and Cats: Using Telehealth and Telemedicine Technologies(米国動物病院協会 AAHA、英語)
- Your Senior Pet From Head to Toe: Home Monitoring Tips(米国動物病院協会 AAHA、英語)
- Senior Dog Care - Special Considerations(VCA Animal Hospitals、英語)
- Can You Have a Dog While Working a Full Time Job?(米国ケネルクラブ AKC、英語)
- Caregiver burden in owners of a sick companion animal: a cross-sectional observational study(Veterinary Record、2017年、英語)
- Guardians' perceptions of caring for a dog with canine cognitive dysfunction(Veterinary Record、2024年、英語)
- The hidden cost of caring: Psychological burden among caregivers of dogs with cognitive dysfunction, cancer, and age-related decline(The Veterinary Journal、2026年、英語)
- Canine Caregivers: Paradoxical Challenges and Rewards(Animals、2022年、英語)
- Caregiver burden and psychosocial outcomes in owners of dogs with chronic paresis and paralysis compared with owners of healthy dogs(Frontiers in Veterinary Science、2026年、英語)
- 老犬の介護
- 仕事との両立
- 家族で共有
- お世話の分担
- お世話の記録
- ペットシッター
- 動物病院